ヒト免疫不全ウィルス(以下HIV)感染症患者のほとんどは、ある時期になると口腔内や顔面に何らかの症状を呈するのが特徴であり、その中の病変にはHIV感染症の早期診断とそれらの予後判定にとって重要な病変も含まれていが、これらの口腔病変について検索した報告は少ない。そこで臨床的ならびに電子顕微鏡学的検索を用いその鑑別法と発症状態を明らかにすることを目的として観察を行い現在のところ以下の結果が得られた。 HIV感染症患者に発症した乳頭腫の生検材料を透過型電子顕微鏡(以下TEM)ならびに走査型電子顕微鏡(以下SEM)にて観察を行った。その結果、TEM所見では最表層の上皮細胞は扁平で細長く細胞質内には微細線維が密につまっており電子密度が高く、その下層の細胞には核周囲に凝集するトノフィブリンやケラトヒアリン顆粒が豊富に観察された。一方SEM所見では、低倍像において糸状乳頭腫の細長い円錐形の突起が多数観察され、表面には一部剥離傾向を示すも敷石状配列をなす上皮細胞が認められ、高倍像になると微笑堤(microridge)が観察された。 今後さらに症例をふやして観察を続けていく予定である。
|