研究概要 |
コントロールドリリース型ドラッグデリバリーシステムを用いた癌化学療法の開発を目的にCDDP封入マグネットリポソームを作製した。リポソームはジアチアロイルDL-α-ホスファチジルコリンとコレステロール(2:1)で逆相蒸発法により作製した。磁気微粒子は走磁性細菌から分離精製し使用した。得られたCDDP封入マグネットリポソームの性状は直径約0.3μm,保持効率約14%,数2.5×10^6個/100μl,CDDP濃度2.8pg/リポソームであった。CDDPに感受性を有するKLN205細胞に対しては,マグネットリポソームのみでは細胞増殖に影響を与えなかったが,CDDP封入マグネットリポソームの投与ではCDDP単独に比べて明らかに増殖を阻害した。FITCラベルのDNAをマグネットリポソームに封入し,その放出速度に対する外部磁場の影響をみた実験では,静置した場合に比べ外部磁場としてスターラーを回転させた場合のDNA放出速度が速くなり,その速度はスターラーの回転数にほぼ比例した。 一方,動物実験および臨床応用のための前段階として,口腔癌のCDDP感受性を予測するパラメーターをretrospectiveに検討した。対象は自治医大歯科口腔外科でCF療法を施行した33例の口腔癌患者で,治療効果とPCNA陽性率を比較した。その結果,PCNA陽性率はPR群で29.0±15.2%,CR群で41.5±9.4%,NC+PD群は23.2±7.2%であった。PR,CR群ではNC+PD群に比べ有意にPCNA陽性率が高く,細胞増殖活性の高い腫瘍ほどCDDPに対する感受性が高く,治療効果の大きいことが明らかとなった。
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