本研究の目的は、骨密度の減少が骨折の治癒経過に及ぼす影響を検索することで、これまでに雌の日本白色家兎20羽を卵巣摘出後、2か月経過した後1か月間低Ca飼料で飼育したものを実験群とし、通常の飼料で飼育した対照群と合わせて顎骨の骨密度をDEXAで測定した。その結果対照群と比較した実験群の骨密度の減少は10%程度であった。当初の実験計画では脛骨を骨折させて実験を行う予定であったが、これまでの経験から手足に傷害を受けて動けなくなると、兎は健康状態を非常に悪化させる可能性があり、また口腔外科医として、日常診療の対象としているのが顎骨であるため今回の実験部位は顎骨に変更して実験を行った。各群の兎に左側下顎下縁に沿って皮膚切開を行い、下顎骨を露出させ、直視下で骨体部を電気エンジンと骨ノミを用いて人工的に骨折させる。骨折部を徒手整復した後、4穴のチタン製マイクロプレートとネジを用いて固定を行った。現在までに実験群8羽、対照群8羽、計16羽の手術を行っており、今後更に20羽程度の手術を引き続き行う予定である。その後に各群共に手術後1、2、4、8週目に4羽づつ、骨の接合部の骨密度の測定を行ってから屠殺し、固定に用いたチタンプレートを除去後骨折部の破断強度の測定と非脱灰研磨切片による組織学的観察を行う予定である。最終的には集めたデーターを比較して、骨折部の治癒が組織学的にあるいは強度的に、骨密度の低下による影響がどのようにかかわってくるかの検討を行っていきたいと考えている。
|