インプラント周囲にヒト歯根膜由来培養細胞を用いた人工歯根膜を介在させ、天然歯により近い機能を再現させることを目的として引き続きヒト歯周組織由来細胞の培養を行い、細胞培養に関する基礎的検討を行った。 歯根面より採取した歯根膜組織の初代培養は、(1)抜歯時の口腔内消毒に十分留意する。(2)無菌的操作で歯根膜組織を採取する。(3)採取した歯根膜組織は抗真菌症例を含むPBSで十分に洗浄する。(4)培養液に耐性菌の少ない抗菌剤を添加して培養するなどの改善により高齢者等の歯周疾患を有する患者からでも初代培養成功率が向上した。 これまでに単層での歯根膜細胞の培養は可能となったが、単層の歯根膜細胞では動物に移植した実験で歯根膜組織の構築は困難であるとの報告がみられることから、実験室内で重層して培養することを検討した。生体の条件に近いとされる細胞の3次元的環境での培養法であるコラーゲンゲル内培養法を現在試みている。また歯根膜細胞はosteoblastのphenotypeであるといわれていることから、歯根膜の他に骨髄組織由来細胞の培養を行ってALPase活性を比較することを検討している。また臨床応用には活発な細胞増殖と分化誘導能を有している時期の細胞を用いることが適当と思われるため、細胞周期、細胞増殖能についても検討中である。
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