痴呆高齢者を対象とした。電極、装置を毟り取る、家族の了解、承諾が得にくい、その日の気分で歯科治療を拒否するため、実際には調査できた患者は5名(男2、女3)と少数であった。平均年齢73歳(68歳〜83歳))。痴呆度は境界方痴呆。治療内容は抜歯3名、局麻下レジン充填1名、歯石除去1名。測定にはA&D社製携帯型自動血圧心拍計(TA-2425+TA-2025)および専用ソフト(TA-2415)を使用した。測定時間は(治療当日朝7時〜翌朝7時)24時間。同時に行動記録票の記入を始めた。治療時間は13時〜14時の間とした。脈拍は12時と18時付近で僅かに増加、14時に僅かに増加した。収縮期血圧およびMAPは14時に低下、17時と21時に上昇した。17時、21時、2時頃はトイレ、オムツ交換、夕食時にあたる。午前中のトイレや食事では血圧上昇は認められなかった。副交感神経機能を反映しているRR50は、昼間は高値を示し、8時、12時、16時頃にピークが見られた。14時頃は逆に落ち込み副交感神経活動の低下が見られ、夜間は低値を示した。RR間隔より得たパワースペクトラムは、0.04〜0.15Hzを低周波成分(LF)、0.15〜0.40Hzを高周波成分(HF)とし、緒家の報告に基づいてHFを副交感神経の指標に、LF/HFを交感神経の指標とした。HFは朝、高値を示し徐々に下降したが12時、15時頃に一過性に上昇のピークがあり、その後は下降し、夜間低値を示した。LF/HFは午前中低値であったが、14時に一時的な高値のピークがあり、その後徐々に上昇し、夜間高値を示した。環境温度は特に顕著な変化は無く。体動は行動表と照合すると、トイレ使用時に顕著に記録されていた。今回対象の高齢者は、感情反応能力は正常者と同等と思われる。本研究によって、術中よりも術後に交感神経は興奮状態にあり、排便、創部痛によって術前よりも血圧上昇を起こすことが判明した。
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