顎顔面領域の疾患による治療後の大きな組織欠損による機能障害、審美障害を持ち、日常生活を強いられる患者が増えている。これらの障害の回復には各種再建材料を用いた再建術が行われている。再建される組織は骨、筋肉、皮膚、神経などで、自家組織の移植術が最も信頼のおける手技として行われ筋皮弁移植術、骨移植術などがある。人工材料の開発も著しく進歩しており、実際、臨床応用されているものも数多くある。近年急速に進歩を遂げているのが患者自身の細胞を培養系で増殖させ応用するという組織工学的手技が皮膚、軟骨などの再建に応用されているが、今回の研究では神経組織再建に応用できる生体材料の開発を目的として、Schwann細胞をin vitroに持ち込み、神経組織のin vitroでの増殖に関わる基礎的実験を行った。最終的な結果として、in vitroの条件下において三叉神経節が凍結融解処理を施したSchwann細胞上で生存することができたことを示しており、Schwann細胞の蛋白質、細胞外接着分子、細胞外基質蛋白質が神経組織の再生に重要であり、人工神経管を応用する際、Schwann細胞を培養系で増殖させ、神経管内に敷き詰め、凍結融解処理を行いSchwann細胞の蛋白質、細胞外接着分子、細胞外基質蛋白質を温存することのみで十分な神経組織の再生促進作用があり、安全で有用性の高い人工神経管開発のために重要な基礎研究成果であると考える。
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