頭頚部癌手術症例より生検材料を摘出後、ATP法による感受性試験と抗メタロチオネイン抗体によるメタロチオネイン蛋白の局在について観察を行った。感受性試験の評価可能症例数は15例で、組織学的分類は扁平上皮癌14例、未分化癌1例であった。感受性試験は主に、現在最も広く使用されている抗癌剤のシスプラチン(CDDP)を中心に行った。 その結果、CDDP感受性試験で50%以上の腫瘍発育抑制率を示したのは3例で、いずれも抗メタロチオネイン抗体の標識細胞率が15%未満であり、また50%未満の腫瘍発育抑制率を示した12例のうち7例は抗メタロチオネイン抗体の標識細胞率が15%以上の群であった。 以上より、CDDP感受性試験と抗メタロチオネイン抗体の標識細胞率との間には相関関係が示唆され、先に行ったSDI法による感受性試験の結果と合わせると、抗メタロチオネイン抗体標識細胞率との相関率は72%(26/36例)で、メタロチオネイン蛋白の存在により腫瘍のCDDPに対する感受性が低下するものと考えられた。 これらの結果については、 第56回日本癌学会総会(1997.9.25.〜27.京都.NKO-09)第13回国際口腔顎顔面外科学会(1997.10.20.〜24.京都.P21-7-9)において発表した。 平成10年度は試料の追加検索を行い、また抗メタロチオネイン抗体の腫瘍細胞における局在特性についてAnticancer Researchに投稿中である。平成11年度は感受性試験との相関について論文作製の予定である。
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