抗癌剤感受性試験を行うと同時に、抗メタロチオネイン(MT)抗体により免疫組織学的検索を行い、薬剤感受性との相関性について検討した。 免疫組織学的検索によるMT蛋白の局在については、36症例の口腔・咽頭扁平上皮癌、咽頭癌、頸部食道癌症例とを対象とした。その結果、標本採取前に何らかの治療が行われた口腔・咽頭癌11症例ではMT陽性細胞率の平均が17.85%、未治療17症例では25.19%、上顎洞癌3症例は4.56%であった。また組織学的に、高分化型9症例17.04%、中分化型13症例21.92%、低分化型6症例31.06%の陽性細胞率であった。 感受性試験の評価可能症例数はSDI法21症例、HDRA法15例であった。SDI法では14例、HDRA法では3例がCDDP感受性試験で50%以上の腫瘍発育抑制率を示す高感受性群で、SDI法で7例、HDRA法で12例は50%未満の低感受性群であった。 これらの結果から36例中MT標識細胞率が15%以上でなおかつCDDP腫瘍発育抑制率50%未満の薬剤低感受性群の症例は11例、MT標識細胞率が15%未満でCDDP腫瘍発育抑制率50%以上の薬剤高感受性群の症例は14症例であり、36症例中25症例(69.4%)にMT蛋白の存在とCDDPの薬剤感受性との間に相関性が認められ、MT蛋白の存在下ではCDDPの薬剤効果が低下することが示唆された。
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