研究概要 |
34例の頸部リンパ節転移陽性症例の原発巣を対象にE-カドヘリンとα-カテニンの発現性を検討した.E-カドヘリンの発現減弱は28例(82.4%)にみられ,α-カテニンの発現減弱は30例(88.2%)にみられた.また,両接着分子の発現減弱例のなかには潜在性リンパ節転移例が含まれていた.腫瘍径が小さいT2症例でも頸部リンパ節転移を生じている場合には,E-カドヘリンとα-カテニンの発現が減弱していた.このような結果は,原発巣の大きさが小さくても高転移能あるいは高悪性度の癌が存在することを示すもので,腫瘍の転移様式は腫瘍の発生初期からすでに確立されている可能性が高いことを暗示している.形態学的に細胞間接着能が乏しい低分化癌やび慢性浸潤癌のなかには,E-カドヘリンを強く発現しながらα-カテニンの発現が減弱あるいは細胞質内で発現異常を示す症例があったり,E-カドヘリンが細胞質内で発現異常を示し,α-カテ二ンの発現は減弱あるいは消失している症例がみられた.このような癌の存在は,頸部リンパ節転移に対する細胞間接着分子の検討にはカドヘリン-カテニン複合体として発現性を観察することが重要であり,α-カテニンの発現減弱はカドヘリン機能の不全を反映することを示唆している.これらの結果から,カドヘリン・カテニン複合体を介した細胞接着機構の破綻が口腔原発癌の転移に関与すること,また,α-カテニンの発現減弱は接着機能の不全を反映することが推察され,両接着分子の検討は頸部リンパ節転移の予測の一助となるものと考えられた.
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