研究概要 |
ウサギの角膜法を用いて、抗HGF抗体の腫瘍血管新生に対する阻害効果について検討した。ウサギの角膜法にVX2舌癌の小片(2mm^3)を移植し、抗HGF抗体を含む徐放性ペレットを腫瘍小片と角膜輪部の間に挿入した。その結果、1)抗HGF抗体を含まない徐放性ペレットを挿入したcontrol群では、角膜輪部から腫瘍小片にまで達する多くの微少血管の形成が肉眼的に認められた。2)一方、血管新生阻害剤TNP-470を含むペレット挿入群(negative control)では、角膜輪部から立ち上がる血管は認められなかった。3)rHGFを含むペレット挿入群では、角膜輪部からペレットにいたる血管がみとめられた。4)抗HGF抗体を含むペレット挿入群では、角膜輪部から立ち上がる血管の数は少なく、また多くの血管は腫瘍小片にまで達さなかった。これらのことから、VX2舌癌の腫瘍血管新生には、部分的ではあるがHGFが関与していることが示唆された。培養血管内皮細胞(HUVEC)が細胞膜上に表出している接着分子ICAM-1,V-CAM-1のHGFによる変化について研究した。96-well培養皿で培養中のHUVECに対して、HGF(10ng/ml)を添加し、ELIZA法を用いてこれら接着分子の発現強度を測定した。その結果、24、48時間後におけるこれらの接着分子発現は、HGF添加群と非添加群で顕著な変化は認められなかった。このことから、HGFは血管内皮細胞におけるこれら接着分子の発現増強に対する影響は少ないものと考えられた。
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