研究概要 |
片側性唇顎口蓋裂患者の正面顎顔面形態の成長に伴う変化を明らかにするために、研究対象として、4歳から17歳までの矯正未治療の男子105名を選択し、これらを以下の4つのstageに分けた。stageI:4歳から6歳(30名),stageII:7歳から9歳(30名)、stageIII:10歳から12歳(30名)、stageIV:13歳から17歳(15名)。資料として同患者の正面頭部X線規格写真を用いた。研究方法は、crista gariを通り左右のLo(眼窩外側縁の影像とoblique lineとの交点)を結ぶ直線に垂直な直線を基準線として、骨格系計測点7点・歯系計測点10点を設定した。計測項目として距離計測10項目、角度計測4項目、さらに咬合状態について調べ、各stageにおける平均値を算出し、検討した結果以下の知見を得た。 1)鼻中隔中央部および最下点は成長に伴い、それぞれ患・健側に変位が大きくなり、その結果鼻中隔の彎曲の程度も強くなっていた。 2)上顎第一大臼歯の正中からの距離は患側が小さく、その傾向はstageIVで顕著となっていたが、咬合平面の傾きや、上顎骨の幅径には全てのstageにおいて差が認められなかった。 3)上顎中切歯は成長に伴い徐々に顎裂に傾斜していた。患側の犬歯も同様に顎裂に向かい、さらに健・患側の高さの程度が顕著となる傾向にあった。 4)下顎角部、オトガイ棘、および下顎中切歯は全てのstageにおいて、健・患側の両側に変位し、一定の傾向は認められなかった。しかし、咬合平面と下顎角部の傾きとの間には有意な相関を認めた。 5)咬合状態は、患側において逆被蓋や切端咬合が多く認められ、その傾向はstageIからstageIIIにかけて減少していたが、stageIVでは増加していた。
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