研究課題/領域番号 |
09672089
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
八若 保孝 北海道大学, 歯学部, 助手 (60230603)
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研究分担者 |
加我 正行 北海道大学, 歯学部, 助教授 (70125300)
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キーワード | ヒト乳歯 / 根尖性歯周炎 / 病的歯根吸収 / セメント質添加 / 培養破骨細胞 / 酒石酸耐性酸フォスファターゼ活性反応 / 走査型電子顕微鏡 / 吸収窩 |
研究概要 |
1. 根尖性歯周炎を有するヒト抜去乳歯の歯根の顕微鏡観察による病的歯根吸収部位の検索については、昨年度報告した通りであり、現在論文作成中である。 2. 感染歯質の培養破骨細胞による吸収動態の観察については、昨年度懸案であった破骨細胞の培養条件を確立することができた。この確立した条件下において、ヒト健全乳歯(n群)および根尖性歯周炎を有するヒト乳歯(p群)のそれぞれの歯根から作製した試料片と、マウスから得た培養破骨細胞で共存培養を行った。その結果、n群のみならずp群の試料片上においても破骨細胞が出現した。酒石酸耐性酸フォスファターゼ活性反応を利用して計測した培養破骨細胞数と計測した試料片の面積により、培養破骨細胞の出現頻度を密度として表し、n群とp群を比較すると、両群には統計学的有意差は認められなかった。しかし、p群においては、病的吸収の著明な部位と比較的吸収が少ない部位において、前者の試料片により多くの培養破骨細胞が存在する傾向が認められた。また、走査型電子顕微鏡による試料片表面の観察により、培養破骨細胞の存在位置に合致する吸収窩が認められた。p群は、根尖性歯周炎を有することから試料片は感染した歯質であり、病的吸収および吸収停止(不全)、さらにセメント質添加が行われた歯質である。このような歯質であっても、培養破骨細胞により、今回の実験系においては健全歯質と同程度の吸収がおこることが示唆された。しかし、歯質の状態により、その吸収状態には差が生じる可能性が示された。このことは、象牙質自体の変性(感染)、象牙細管内のたんぱく質の変性などのような歯質の状態が、培養破骨細胞の出現(誘導)に影響を与えるものと考えられた。前述の1.根尖性歯周炎を有するヒト抜去乳歯の歯根の顕微鏡観察の結果をあわせて考えると、歯根(歯質)の状態および歯根周囲の環境が病的歯根吸収に大きな影響を与えていることが示唆された。 3. ラット皮下組織への歯質の埋入による吸収動態の観察については、現在、観察用切片作製中であり、順次顕微鏡観察を行う予定である。
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