研究概要 |
本年度は、歯根膜細胞と同様に歯周組織に存在する骨芽細胞にin vitroで持続的圧縮力を負荷して、メカニカルストレスによるストレスタンパク質の発現を歯根膜細胞と比較するとともに、ストレスタンパク質の発現調節に関与している転写活性化因子HSF-1について解析を行った。ヒト骨芽細胞様細胞株MG-63を10%FBSを含むαMEM中で培養し、コンフルエント後、6-well培養ディッシュ上で、2,4g/cm^2の持続的圧縮力を負荷した。圧縮力負荷後、HSP 27,47,60,70とHSF-1の経時的なタンパク発現をこれらに対する抗体を用いてウェスタンブロッティング法により調べた。また、細胞増殖活性の測定をalamr Blue^<TM> Assay kit(Bio Source社)により測定した。実験の結果、HSP27の発現は12、24時間の圧縮力負荷により著しく増強し、HSP 60の発現は4g/cm^2の圧縮力を6〜24時間負荷すると増強した。これに対してHSP47の発現は2〜12時間の圧縮力負荷で減弱したが、24時間負荷では対照群と同程度の発現状態に戻った。また、HSP70の発現はほとんど変化しなかった。HSF-1の発現は圧縮力を24時間負荷すると85kDのバンドは増強する傾向があったが、95kDのバンドの発現様相に変化は認められなかった。細胞増殖活性は2,4g/cm^2の圧縮力負荷により低下した。以上の結果より,HSP 27,60の発現の増強は、圧縮力負荷に伴う細胞内での変性タンパク質の生成と密接に関連し、これらのHSPは圧縮力負荷に伴う細胞の変性、壊死に対する防御機構において何らかの役割を果たしていると考えられた。また、各HSPの発現様相は歯根膜細胞とは異なり、メカニカルストレスに対する各種ストレスタンパク質の役割は細胞により異なることが推察された。
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