【目的】歯列に及ぼす舌の圧力が不正咬合の発現や術後の後戻りの原因となっている可能性のあることは指摘されているが、その客観的な評価は十分になされていない。また、従来の舌圧を測定した研究では意識的に嚥下などの随意運動を短時間行わせたものが多い。 そこで本研究は、舌の接触圧およびそれに影響を与えると考えられる頭位をより自然な状態で長時間に渡り定量的に評価することを目的としたシステムの開発を試みた。 【方法】本システムでは上下顎歯列歯槽部および口蓋部に最大8チャンネルの微少圧力センサを組み込んだ薄型のプレートを用い、各圧力センサへの舌接触を確認するための送信用電極および矢状面的な頭部の傾斜度を測定するアナログ傾斜計からのデータが1フレームあたり0.5秒毎に入力される。これらは携帯式信号処理装置でデジタル化した後、小型の無線送信機により200mの範囲まで転送される。受信したデータは可搬性を考慮したノートブックタイプのパソコンに記録され、そこで信号の処理、解析を行う。 【結果】本システムは口腔内に多数配置された圧力センサへの舌接触を確認しながら舌圧と頭位を同時に測定できることが実証された。また、頭部の傾斜度と前歯部への舌接触圧との間には関連性のあることが示唆された。 【結論】本システムにより活動時における長時間の頭位および舌接触圧を測定することが可能となり、被験者の居場所に依存しない機動性の高いデータを採得することができるようになった。現在、正常咬合社と開咬症患者のデータを採得中である。
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