研究概要 |
メカニカルストレスにより口腔顎顔面領域の骨リモデリングが惹起され、骨格形態に変化が生じることが従来から知られているが、その詳細については未だ不明な点が多く残されている。一方、骨芽細胞や歯根膜細胞などの間葉系細胞にメカニカルストレスを加えると、サイト力インの一種であるインターロイキン-6(IL-6)が産生されることが報告されている。また、近年IL-6は可溶性IL-6受容体(SIL-6-R)と複合体を形成し、gp130を介して細胞内にシグナルを伝達することが知られている。本研究においては、間葉系細胞における力学的刺激情報伝達系の解明を目的とし、ヒト骨肉腫由来骨芽細胞様細胞株MG-63を用いてIL-6の影響ならびにその情報伝達系路について解析を行ったところ、以下の結果が得られた。 1.MG-63ではIL-6受容体は検出されず、IL-6単独で同細胞を刺激しても何ら変化がみられないのに対し、IL-6/sIL-6Rを加えるとアルカリフォスファターゼ活性の上昇と増殖活性の減少が観察され、これらの現象はgp130に対する中和抗体によりブロックされた。2.IL-6/SIL-6Rの刺激により、gp130,JAK1,JAK2のチロシン残基のリン酸化が観察された。さらに、これらの細胞内情報伝達系路の下流に位置すると考えられるSTAT1,STAT3もリン酸化され、核への移行とDNAへの結合が観察された。3.IL-6/sIL-6R処理によりMAPキナーゼの活性化が観察された。以上の結果から、sIL-6Rの添加によりMG-63はIL-6の情報を核内に伝達し、細胞の表現型に変化を生じ、その際JAK-STAT系ならびにMAPキナーゼ系が密接に関与することが明らかとなった。したがって、これらの機構が口腔顎顔面領域の間葉系細胞内力学的刺激情報伝達系においても重要な役割を果たしうる可能性が示唆された。
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