研究概要 |
安静時に上下口唇間が大きく離開し、口輪筋の緊張の弱い上顎前突あるいは開咬を有する成人男子に対して,口唇の形態と機能に異常を認めず、かつ安静時に上下唇が軽く接触している正常咬合を有する成人男子を対象被験者として、両被験者に主咀嚼側でガムを咬ませ、その際の下顎運動および左右の咬筋、顎二腹筋筋電図の記録を行った。咀嚼の第5ストロークから第14ストロークまでの10ストロークを解析の対象とし、各ストロークの最大開口距離、顎二腹筋筋電図の持続時間、積分値、開口相開始から咬筋の筋放電開始までの時間、咬合相開始から顎二腹筋の筋放電開始までの時間といった項目を計測し、両者において、それらの計測値に差が認められるか否かを比較し、検討した。 その結果、 1.上顎前特、開咬を有する被験者の最大開口距離が対照被験者のそれに比較して小さくなる傾向が認められた。 2.下顎運動の駆動系である筋活動に関して,前者において咬合相開始から顎二腹筋の筋放電開始までの時間が延長し、筋活動の持続時間が減少する傾向が認められた。 以上のことより,安静時に上下唇間が大きく離開しているような上顎前突あるいは開咬を有する不正咬合者では口唇機能の正常な者に比べて咀嚼運動が効率よく行われていないことが明らかとなり、その原因の1つが口唇からの感覚情報を減少させるような口唇および歯・顎骨の形態不正にあることが示唆された。 以上の結果は、学術雑誌に報告する予定である。
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