研究概要 |
研究目的は、歯根膜保存状態が、自家移植歯の生理的な移動(挺出)と矯正移動に与える影響を調査することである。研究結果は以下にまとめられた。 1, ラット上顎臼歯部におけるチタン製インプラントによる歯の移動の不動固定源からの歯の矯正移動実験系が確立された。 2, X線セファロならびにX線CTによる観察と評価方法が確立された。 3, ラット抜去歯の上顎臼歯部、頭頂骨部への移植実験系について 第一臼歯を抜去し、頭頂骨部および上顎臼歯部に移植して検討を行った結果、即時移植群では歯根周囲に歯根膜様の組織を観察することができ、部分的な歯根吸収が観察されるが、著しい置換性骨吸収は観察されなかった。一方歯根膜保存状態のよくない場合には、歯髄の炎症、壊死像ならびに著しい炎症性歯根吸収と置換性骨吸収が生じていた。 4, ラット移植歯の歯根膜保存状態が、生理的移動と矯正移動に与える影響について 歯根膜保存状態がよくない群では、周囲歯槽骨の炎症所見が観察されたのに対して、即時に移植した群では、軽度の炎症所見しか観察されなかった。また、歯根膜の保存状態がよい場合には、移植歯の挺出が観察されたが、乾燥歯根では歯周部で骨吸収が生じた。矯正移動についても同様な傾向を示した。 5, 移植歯ならびに歯の移動時の免疫担当細胞の動態について 歯根膜の免疫担当細胞はマクロファージと樹状細胞と呼ばれる細胞であるが、OX6免疫染色によって識別することができた。歯の移植を行った初期反応においても、近心面と遠心面で明確な差異が認められなくなった。 6, 移植歯の臨床治療結果と基礎的研究データの関連性の評価 臨床分析結果と基礎実験系の結果は同じ傾向を示し、自家移植歯は正常機能を有する健全歯とインプラントや骨性癒着歯との中間的な種々の特性を有すると考えられた。
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