現在歯が少なくなると咬合支持が低下し、残存歯への負担が過重になり歯の動揺につながるという仮説をたて、動揺歯の有無と現在歯数の関連について断面的調査を行った。 調査対象は1997年に新潟県板倉町成人歯科健診を受診した770名である。このうち現在歯が10歯以上あり、動揺度を測った472名(平均年齢58.4歳)を分析対象とした。 動揺度の測定は、ピンセットを使用して頬舌的に動かし行った。基準は次のとおりである。MO:約150gの力で動揺を認めない、Ml:約150gの力で動揺を認める、M2:約50g以上の力で動揺を認める、M3:約50g以下の力で動揺を認める。 分析ではMl以上を動揺歯とし、動揺歯を1歯以上持っている者を動揺あり、動揺歯を持っていない者を動揺なしとして、口腔内所見、アンケートの項目別にクロス集計を行った。さらに、動揺歯の有無を従属変数としてロジスティック回帰分析を行った。 分析対象者の30.5%に動揺があり、動揺のある者(144名)の動揺歯数の平均値は3.38本(SD3.15)だった。動揺ありの割合を年齢別にみると、20〜60才代まで増加し、60才代、70才代で最も多く44.0%、80才代では若干減少し33.3%だった。 動揺度の有無別に行ったクロス集計の結果、危険率1%未満で有意だった変数は、年齢、性、現在歯数、ポケット、クラウン歯率、喫煙の6変数だった。ロジスティック回帰分析の独立変数から除いた。ロジスティック回帰分析の結果、有意であった変数は年齢、現在歯数、ポケットの3変数であり、オッズ比はそれぞれ3.5、3.1、4.2であった。したがって、本分析で最も注目した現在歯数については他の諸要因をコントロールしても、現在歯数が20歯未満の者は20歯以上の者に比べて動揺歯を有する確率が約3倍高いことが示され現在歯数が減少すると動揺が増すという仮説は支持された。
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