成人集団における歯牙喪失の実態をと要因について検討することを目的に、新潟県板倉町において1994年度に行われた成人歯科健診受診者のうち、1986〜93年度に同町で実施された成人歯科健診を受診した309名(男122人:女187人)を対象として、1994年度を起点とした後ろ向きコホート調査を行った。分析対象者の過去受診時(1986〜93年度)における平均年齢は、56.0歳(SD=9.7)であった。過去受診時から1994年度の健診受診までの年数の平均は4.4年(SD=2.3)であった。 分析は、まず過去受診時と1994年度における口腔状態を比較し、その期間中に生じた歯牙喪失の有無および喪失歯数の分布を確認し、年間平均喪失歯数を算出した。さらに、歯牙喪失の有無について、過去受診時の口腔状態に関する変数を用いて、クロス集計とロジスティック回帰分析を行った。 過去受診時と1994年度受診時における口腔内の状況を比較したところ、現在歯数は有意に減少(23.13→22.04)していた。その内訳をみると、未処置歯数と健全歯数は有意に減少し、処置歯数は有意に増加していた。 調査期間中における歯牙喪失を経験していた者の割合は、42.7%であった。喪失歯数の分布をみると、ゼロが最多で左側に偏った分布を示した。また、喪失歯数は一部の人に偏っており、喪失歯全体の57%は10%の人によるものであった。年間平均喪失歯数は0.27(SD=0.55)であった。 調査期間中の歯牙喪失の有無について、過去受診時における口腔状態別にクロス集計を行ったところ、歯牙喪失の割合は、現在歯数が20歯未満の者、未処置歯数と歯周疾患のある者で高い傾向が確認された。ロジスティック回帰分析によっても同様の傾向が確認され、う蝕および歯周疾患の活動性が高く、残存歯数が少ないことが歯牙喪失のリスクとなることが示唆された。
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