研究概要 |
象牙質の再石灰化は有機質上へのミネラルの自然沈着あるいはミネラルの核化によって起こるのではなく,残留ミネラルの成長によって起こることを多くの研究が支持している。しかし一方で再石灰化阻害作用を有するnon-collagenous protein(NCP)が除去されれば有機質上に石灰化が起こることを示した報告もある。本年度の研究の目的は中性EDTAで脱灰された歯根象牙質初期lesionの再石灰化能について検討することであった。EDTAを歯根象牙質に15,30,120分間作用させて脱灰し,さらにある群ではEDTAよりも強力なNCP除去剤である1M NaClまたは4M Guanidine chloride(GuCl)を作用させた。その後2週間再石灰化液に浸漬し,再石灰化の程度をmicroradiographyで評価した。最も脱灰条件の厳しいEDTA120分処理群においてはフッ素を含む再石灰化液浸漬での評価も行った。結果はフッ素が再石灰化液に含まれない場合,再石灰化は全く起こらなかった。フッ素が含まれる場合はlesionの底部において再石灰化が認められた。この結果は象牙質の再石灰化は有機質上にミネラル沈着が起こったりミネラルの核化が起こってできるのではなく,残留ミネラルの成長によって起こるという説を支持している。一方再石灰化液中に2ppmフッ素が含まれた場合,再石灰化がlesion底部で認められたことはNCPによる再石灰化抑制作用を乗り越えてフッ素が残留ミネラルの成長あるいは結晶の核化を促進したためと考えられる。
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