研究概要 |
前年度までに,鹿児島大学の男子学生のうち顎口腔機能に異常のない正常咬合14名(N群),叢生15名(C群).計29名を対象にオクルーザル・スプリント装着時(OS),咬頭嵌合位(ICO),ブラセボ・スプリント装着時(PS)の3条件下で,利き腕の上肢肘関節屈曲筋群の等尺性運動時のAverag Torque(AT),Peak Torque(PT)を測定した.今年度は,その測定値をもとに分析を行い,以下の結果を得た. 分折:筋力値としてAT,PTの2値を用いた.また筋力は個人間による差が大きいと考えられるため,上記の3条件のうちNCの値を100としたときの他の2群の割合(百分率値)を算出した.測定値,百分率値のそれぞれの値について,OS,NS,PSの3条件間の平均値の差の有意性を一元配置分散分析で検定した. 結果:測定値から,N群,C群のAT,PTはいずれも3条件間に差がなかった. 百分率値から,N群のAT,PTはいずれも3条件間に有意差はなかったが.C群のAT,PTのOSの値は他の2条件に比べ有意に大きかった. 考察:C群のAT,PTのOSの百分率値は他の2条件に比べ有意に大きく,上肢肘関節屈曲筋群の筋力はオクルーザル・スプリント装着時に増加した. 噛みしめによりヒトヒラメ筋H反射は著しく促通を受けてその促通量は噛みしめ強度と正の相関を示す(宮原ら,'91).叢生では咬合接触面積が正常咬合に比べて小さいが(粥川,'95).オクルーザル・スプリントの装着により咬合力は分散され歯列弓内で均等化する(前田ら,'90)ことから,これが噛みしめ強度の変化に影響して上肢肘関節屈曲筋群の筋力が増加したと考えられる.
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