研究概要 |
口腔に常在するStreptococcus milleri群は,細菌性心内膜炎,糸球体腎炎,化膿性病巣などの全身感染症の原因菌になりうることが従来より指摘されてきたが,最近では上部消化器癌において高率に検出されるという報告もあり,その病原機序の一端を明らかにするために、S.milleriの生体細胞との親和性や定着機構の解明が脚光を浴びてきている。 本研究では,まずS.anginosus,S.constellatusおよびS.intermediusから構成されているS.milleri群に属する、口腔および全身感染巣から臨床分離株134株について細胞外マトリックス(ECM)への結合性をELASA法によりスクリーニングした。その結果,S.milleri群のうちS.intermediusに属する菌株のみが高いECM結合能を示し0さらにこれECM構成分のなかでもlamininへの特異的な結合によることを見い出した。このlaminin結合能は特に血清型Osano-I(-)のS.intermedius菌株せ高く、Osano-III(gあるいはj)菌株では低かった。培養菌体をトリプシンや熱で処理すると結合能が消失すること,また各種の単糖や小糖の添加によっては結合が阻害されないことなどにより,この結合は菌体表層のタンパク性物質が関与しているとが考えられた。次いで,S.intermedius ATCC27335 (OsanoI血清型)の菌体を超音波処理して結合因子を可溶化し,イオン交換カラムトクロマトグラフィーとゲル濾過を用いて粗分画してlaminin結合活性画分を集め,これあをさらにSDS-PAGEし、Western blotによりlamininと特異的に結合する50kDaのバンドを分画,特定した。 今後は、このlaminin結合タンパク質のN-末端アミノ酸配列を調べ,それをもとに合成したoligonucleptide probeを用いてクローニングを行い,遺伝子構造,アミノ酸配列を調べて,lamininと結合活性を有する部位およびその結合機構を解明していく予定である。
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