研究概要 |
本研究は,歯科医療従事者の集団を対象にHCV血清抗体を継続的に追跡調査し,その陽転率を算定すると同時に職業上の推定感染源,非職業上の推定感染源について聞き取り調査を行い,その結果を非医療系職業従事者の結果と比較して,歯科医療従事者の職業上のHCV感染の危険性を評価し職業上の感染経路を明らかにすることを目的とする. 本研究はコホート研究とし,初回抗体測定でのHCV抗体陰性者にてコホートを構成し,経年的にHCV抗体の測定および感染要因に関する聞き取り調査を行っている.聞き取り調査は性,年齢,職種,療従事年数だけではなく,非職業上の推定感染源に関して肝炎の既往・輸血歴・人工透析歴・家族内のHCV抗体保有者の状態,職業上の推定感染源に関して前回調査以後における針刺し事故の頻度や状態について行っている.平成11年度までに831名の歯科医療従事者について調査を行いコホートを設定した.本年度研究では平成11年度までに設定したコホートのついて再調査を実施したが,抗体陽転例は認められなかった. 以上にて,血清疫学調査は一応終了とし現在解析作業を行っている.解析は歯科医療従事者のHCV抗体陽性率の一般との比較,さらに人年法によるHCV抗体陽転率について行っている.現在までの結果では歯科医療従事者の抗体陽性率は一般と比較しても低く,また調査期間中の抗体陽転例は認められておらず歯科医療を介したHCVの伝播の可能性ははきわめて低いものと考えられる.今後の解析にてこの低い可能性がどの程度のものであるかを明らかにする予定である.
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