咀嚼筋活動と口腔周囲の環境との間には非常に密接な関係が存在する。今回の研究では、咬合高径の増加や、咬合部位、咬合領域の変化が咀嚼筋活動に及ぼす影響について検討した。 被験者は、正常な咀嚼筋活動を有する成人男子10名である。 1) 終日筋電図採得分析システムを用いて、24時間の咀嚼筋電図の記録を行った。その際の咬合高径の設定は、それぞれ咬合挙上板を用いて2、4、8mm挙上したもの、挙上量Ommの挙上板装着、そして装置無装着(N)とした。 2) それぞれの被験者について、デンタルプレスケールを用いて、最大咬合力、咬合接触面積を測定した。被験者は最大咬合力と左右の咬合バランスの違いから2群に分類した。上記の条件の咬合力のデータから、3種類の咬合挙上板を作成した。片側一歯のみに接触する局部咬合挙上板、両側同名歯に接触する両側局部咬合挙上板、それに全歯接触型咬合挙上板である。長時間筋電図採得分析システムを用いて、上記挙上板装着時の睡眠時の筋電図の記録を行った。 得られた結果は次の通りであった。 1) 睡眠時の咬筋活動は、安静位空隙を大きく越える咬合挙上板を装着した時、明らかに減少した。またその筋活動は、咬合挙上以外の要因によっても減少し、個人差が大きかった。 2) 睡眠時の咬筋活動は、片側に咬合接触を与えると減少した。しかし、両側に咬合接触を与えた場合は、咬筋活動の減少は最大咬合力の大きさと咬合部位の違いに関連が見られたが、咬合接触面積の変化には関連が見られなかった。
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