研究概要 |
本年度は,天然フッ素地域である対象地区(青森県北津軽郡板柳町)の小学校児童について,飲水および生活環境の調査とあわせて,口腔診査を実施し,齲蝕(歯冠および根面),歯周疾患,咬合等について診査を実施した。その結果,1〜6年生の平均DMFTは,順に0.2,0.8,1.5,1.8,2.5,3.4であった。この値は,平成5年歯科疾患実態調査の6〜11歳児の値(0.23,0.87,1.47,2.16,2.75,3.63)とほぼ同レベルであった。また,同一地区で上水道が完備する以前に入学した児童の1〜4年生の値(0.29,0.64,1.38,1.81;1983〜1995年調査)とも同程度であった。すなわち,対象地区の齲蝕有病状況は全国なみであり,飲料水が天然フッ素含有簡易水道水からフッ素を含有しない上水道に変更された時期の前後で,極端に齲歯数が変動することはなかったことが示唆された。この理由については,医療環境の変化(歯科医療機関の増加)をはじめとする社会環境の変化や,対象者の生後の居住および飲水歴等との関連を含め,詳細なデータ解析と現地調査を継続する予定である。なお,歯牙フッ素症の軽微型以上の発現率は全校児童で3.3%で,上水道設置後は,設置前の1985年入学児童の値(18.6%)と比較して明らかに減少したことが判明した。
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