この研究の目的は非フッ素化された飲料水の供給が1988年から開始された天然フッ素地区(板柳町)における飲料水中のフッ素濃度の変化の影響について評価することである。1998年に6歳から14歳の学童・生徒を対象に歯科検診が実施された。加えて、1988年以降もフッ素を多く含む地下水を飲用していることも考えられることから、居住歴と飲料水中のフッ素濃度についても調査した。天然地下水のフッ素濃度は0.25-1.52ppmであり、上水道のフッ素濃度は0.05ppmであった。質問紙法の結果では17%の子供が現在でも地下水を飲用していた。6歳から11歳の一人平均DMF歯数は1993年の歯科疾患実態調査の結果とほぼ同様であった。1975年から1976年の調査では一人平均DMF歯数は全国地の約1/2だったことから、この地区においては齲蝕が近年増加してきていることが明らかとなった。それに伴い子供たちにおける歯牙フッ素症の発症は減少してきている。この地域における飲料水由来のフッ素による齲蝕予防効果は失われ、近い将来齲蝕罹患が高まることが考えれらることから、有効な歯科保健プログラムが必要と考えられた。
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