研究概要 |
お茶の葉を粉末にした製品(食べるお茶)が市販されているが,お茶の葉には高濃度にフッ素(F)が含まれていることは明らかである。これらを毎日摂取することはF摂取量の増大はもちろん,お茶の葉中の多有機質中Fが胃酸によってionic Fへと遊離,吸収される事も,著者の人工胃液や人工腸液による成績から明らかである。そこで本研究では,お茶の葉中の多有機質中Fから遊離したionic Fの動態について,抹茶および「食べるお茶」製品によるラットの投与実験を低F飼料で行い,組織中へのF分布を検討した。 『実験』1)動物実験;SD系雄ラット3週齢(1群6匹),4週間の予備飼育後,投与4週間後に屠殺。2)群および飼料;「食べるお茶」2製品(No.1,No2の2群),抹茶(No.1,No2の2群),缶入りお茶製品(緑茶,ウ-ロン茶の2群)の計6群。飼育はいずれも低F飼料で飼育。なお,動物数を少なくするために対照群および通常の飼料群は設けなかったが,先に行った低F飼料での成績と比較検討する^<a)>。そのため飼育期間等の条件は同じに設定した。3)投与量;粉末茶は「食べるお茶」のふりかけ量を参考に15μgF/kg・wt/dayになるように蒸留水に懸濁して作成し,1日1回胃ゾンデによる強制経口投与した。なお,F濃度の低い「食べるお茶」No.2は2μgF/kg・wt/dayとした。缶入り製品は自由摂取とした。4)F測定;IE法またはDiff法。 『結果』1)平均体重増加量;飼育6群間で差はみられず,F投与および缶入りお茶製品による影響はみられなかった。2)血漿中ionic F濃度;各群とも,先に行った低F飼料での投与実験の対照群と比べ高い値であったが,有意差は缶入りのウ-ロン茶群の1群でのみであった。また通常飼料群とではいずれも有意差がみられた。硬組織中のionic F濃度については,現在検討中である。 a)古山公英,他:有機および無機フッ素投与ラットの組織中フッ素濃度,ジフルニサルとNaF投与 その2.口腔衛生会誌,43;470-471,1994.
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