研究概要 |
近年,歯科領域においても活発に応用が試みられている超音波診断装置は,人体の任意断面を非浸襲的に形態,動態分析が行うことが可能である。また電子工学技術の発達にともない,生体の組織性状,物理特性を定量的に評価するためのultrasonic tissuecharacterization(組織特性評価)に関する研究も行われている。そこで本研究では,超音波エコーレベルの変化および組織音響特性の解析から,顎顔面領域における咀嚼筋の断面積,収縮活性ならび物理特性などの定量的評価をおこなうことを目的としている。本年度は以下の研究を行った。 1) 超音波診断装置の食用肉を用いた正確なエコーレベルの算出法の確立 市販の食用肉を測定の対象として,数種類の超音波診断装置にてAモード,Bモードの撮影を行い,得られた超音波画像上に関心領域(ROI)を設定,エコーレベルとそれぞれのヒストグラムを解析し,それぞれの病理組織像と比較検討することで組織性状の定量評価に最も適した撮影条件を検討した。 2) 咀嚼筋超音波画像の三次元化 プローブの方向性と接面形状を改良したうえで,一定方向からの撮影を可能とし,得られた画像を三次元化する試みを行った。その結果,顔面上での咀嚼筋形態を三次元的に把握することが可能となり,その筋断面積から体積収縮率等を算定した。そして咀嚼筋牽引力の推定と,さらに筋力と筋束長から筋トルク値の推定も可能とした。 3) 物理実験結果と超音波診断装置から得られた測定値との比較 BモードエコーレベルおよびAモードより測定された組織弾性率と対象とした食用肉の物性状を比較・検討した。 4) CT画像との比較検討 超音波画像とCT画像から得られた咀嚼筋筋幅の測定値を比較検討した結果,強い正の相関が得られた。 以上の研究の結果,咀嚼筋の弾性,組織性状の評価に超音波が有用であることが明らかとなった。
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