研究概要 |
【目的】 都内数カ所の歯科医院の診療室内における空中浮遊菌の存在状態を調査し,空中浮遊菌の種類とその割合さらに経時的変動について検討した。【方法】 調査対象は,都内6カ所の歯科医院の診療室内において実施した。浮遊粉塵数の経時的な変動は,レーザーパーティクルカウンターを用い,粒度別の粉塵数の推移を測定した。空中浮遊菌の測定は,微生物用アンダーセンサンプラーにより,血液寒天培地およびMitis Salivarius寒天培地上に菌を捕集した。捕集した空中浮遊菌は、培養後のコロニー数を計数し、さらに菌種を同定した。空中浮遊菌の経時的変動の測定には、スリット式空中浮遊菌オートサンプラー装置で,1プレート(培地)について5分間隔で12回連続補集の条件で5時間実施した。【結果】 都内6カ所の歯科医院において、歯科診療室の空中浮遊菌の種類とその割合について検討した。グラム陽性球菌類は、全体の33%、グラム陽性桿菌類は37%、糸状様真菌は30%であった。これに対して,Mitis Salivarius寒天培地では、グラム陽性球菌類は、全体の35%、グラム陽性桿菌類は23%、糸状様真菌は38%という結果を得た。また,口腔内由来と考えられるα、γ溶血レンサ球菌は、血液寒天培地では、全体の4,5%だったのに対し、Mitis Salivarius寒天培地では,全体の31%で約7培を検出した。さらにα,γ溶血レンサ球菌を詳細に同定したところ、それらはすべて口腔レンサ球菌であった。また対照とした待合室、研究室では,α,γ溶血レンサ球菌の検出はなかった。空中浮遊菌の経時的変動の結果は歯牙切削時に浮遊粉塵数に伴い空中浮遊菌も上昇し,そのときの菌種はα、γ溶血レンサ球菌が高率に検出され、歯牙切削終了後2時間経過後においてもα、γ溶血レンサ球菌が検出された。【考察】 口腔レンサ球菌はMitis Salivarius寒天培地を用いることで、血液寒天培地より高率に検出が可能でり,歯科診療に伴う飛沫感染や診療室内環境の汚染モニターとして、口腔レンサ球菌を指標とする意義は大きいと考えられた。空中浮遊菌の経時的変動の結果から,空中浮遊菌の変動をモニターする必要性があると考えられた。
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