本研究は、う蝕予防剤の開発に鑑み、従来より水歯磨き剤として利用のある塩化セチルピリジニウム(CPC)と同じ第4級アンモニウム塩である塩化デカリニウム(DC)と臭化ドミフェン(DB)に着目し、これらの薬物に水歯磨き効果があるか否かを、(1)in vitro実験、(2)動物う蝕実験、(3)臨床試験、を通して検討したものである。 1 In vitro実験からは、DCおよびDBはともに血清型c(S.mutans)およびg(S.sobrinus)菌体のGTaseを阻害することが示され、その阻害効果はDBよりもDCが強いことを明らかにした。 2 DCまたはDBを混入した飲料水をS.sobrinus接種ラットに与えたう蝕実験からは、菌の歯面への付着を少なくしてう蝕の発生を抑制することが示され、その抑制効果はDBよりもDCが強いことを明らかにした。 3 DCまたはDBの水溶液をヒトに洗口させた臨床試験からは、プラークの付着量がDBにより少なからず、DCにより明らかに抑制されることを明らかにした。 これらの成績は、両薬物には抗う蝕効果があることを、そしてその効果の度合いがDBよりもDCが強いことを明確に示している。かかる効果の発現には、それらの薬物がもつ抗菌作用とGTase阻害作用により、菌の歯面付着が減じてプラークの形成を抑制したためと推察された。 このように、DCおよびDB、特にDCに優れた抗う蝕性を認めたのは本研究が最初であり、さらにその経口毒性が低いことを考え合わせると、水歯磨き剤としての実用への期待と興味がもたれる。
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