研究概要 |
【目的】関節の軟骨基質成分の分解は,血滑膜細胞,軟骨細胞,から産生される種々の蛋白分解酵素(プロテアーゼ)により生じる。なかでも,至適pHが中性領域にあるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)は,軟骨破壊との関係から注目されている。そこで,本研究では顎関節および膝関節滑液中のプロテアーゼを明らかにするとともに,その活性と臨床病態との関係を検討した。 【資料および方法】顎関節の資料としては,希釈回収法により得られた顎関節症患者の滑液を用いた。一方,膝関節の資料には,膝関節に滑液の貯留が認められた変形性関節症(OA),および慢性関節リウマチ(RA)の滑液を用いた。関節滑液のプロテアーゼ分析には,SDS電気泳動を応用したエンザイモグラムおよびウエスタンブロットを用いた。 【結果および考察】(1)顎関節および膝関節から得られた滑液には,ゼラチンを基質とするエンザイモグラムおよびウエスタンブロット法により,主に分子量92KDa(proMMP-9)と72KDa(proMMP-2)のプロテアーゼが観察された。(2)顎関節において,特にMMP-9の活性型(83KDa)のプロテアーゼは,正常例に比べ,顎関節疾患症例のうち罹患期間の長い症例で高値を示すことが観察された。(3)膝関節滑液でもRA症例のおよびOA症例のうち重度の症例の滑液で同様にMMP-9活性型が強く認められた。 以上のことより,顎関節疾患におけるMMP-9活性の増加は,関節病態の進行を表す一つの指標となるのではないかと思われる。今後、動物実験などでこのことを確認する予定である。
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