研究概要 |
研究目的は、放射線を被曝することなくチェアサイドで頭蓋顎顔面形態計測を接触式3次元デジタイザーで行なうシステムを開発することである。開発内容は三部門で、一つは、適切な頭部固定装置を備えた治療用デンタルチェア、パーソナルコンピュータ、デジタイザー等設備を連結することである。二つ目はソフトウエアの開発で、得られた頭蓋顎顔面領域の計測点の相対3次元座標値を絶対座標値に変換後、2次元の基準三平面(FH平面、正中矢状平面、眼窩平面)上に投影して角度計算および距離計算を行なうソフトである。算出した角度および距離は、従来の頭部X線規格写真分析値と比較できることを期待した。三つ目は、本システムの較正とサンプル測定である。開発したシステムは移動式且つコンパクトであり、計測性能も満足のできるレベルであった。このソフトウエアは、頭蓋顎顔面領域の60計測点の3次元座標値を採取することによって、この領域の93項目にわたる形態分析を行なう。3次元デジタイザー(Micro Scribe 3D【.encircled?.】R【.encircled?.】)の相対精度は、メーカー表示で0.250mm、我々の実験で0.258mmとほぼ同じであった。10mmの精密ゲージブロックを用いた較正では、対照とした高精度のドイツ製ツアイスUMC-S850【.encircled?.】R【.encircled?.】(メーカー表示精度:U95 2.5+L/250um)の精度は±0.0005mmであったのに対し、本システムの精度も±0.0515mmと良好であった。ヒト乾燥頭蓋の31計測点を鉛点表示して、両者で得られた3次元座標値を比較したところ、座標(x,y,z)の各値の平均絶対値差はx座標で0.2670mm,y座標で0.3623mm、z座標で0.1370mmと小さかった。また両者による乾燥頭蓋骨の角度および距離計測値でも、差が比較的小さかったことから、本システムの計測装置としての精度は特に問題は無いと考える。結論として、本システムは計測対象の選択を適切に行なう限りは、頭蓋顎顔面形態計測のための極めて有効な非放射線計測法であると考える。
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