研究概要 |
これ迄の研究によってbicylo[2.2.1]heptane骨格をバックグランドに持つメソ対称性のシクロヘキセン-1,4-ジオールビスシリルエーテルの触媒的不斉異性化反応によってキラルな4-オキシシクロヘキセノンとして機能するキラル合成素子の効率的合成法を確立し,6種の天然物[(-)-quinic acid,(-)-shikimic acid,(-)-zeylenol,(-)-tonkinenin A,(-)-uvarigranol G]の効率的な合成法を確立している.しかし,本反応では用いる基質が限定されるという弱点も持ち合わせている事も明らかにしてきている.そこで,本研究ではさらなる適用範囲の拡大をめざし,基質の検討と高選択性をもたらす基質の必要条件の検索を行った. まず,本反応が光学分割へ適応できるかどうかを調査する目的で,これまで用いて来た基質と同様にbicylo[2.2.1]heptane単位をバックグランドに持つ6員環および7員環アリルアルコールシリルエーテル類を用いて検討を行った.その結果,6員環の基質では全く選択性は発現せず,7員環では中程度の選択性(42.4%ee)が観察された.一方,本反応はアリルアルコールのエステル類では進行しない事が明らかにされているため,高選択性をもたらしたメソ対称性のシクロヘキセン-1,4-ジオールビスシリルエーテルの一方のシリルエーテルをベンゾイルエステルに変換して光学分割が行えるかどうかを検討した.しかしながら,本基質においても選択性は全く見られなかった. 以上のことより,本反応が高選択性を持って進行するためには,両側のアリル位にある程度の大きさの置換基の存在が必須である事が示唆され,今後の基質のデザインに対する大きな足がかりを見いだす事ができた.
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