エチニル芳香環のメタル化反応を二つの形式で検討した。すなわち、あらかじめ閉環に有利な中間体を形成しておき、そのメタル化反応を行い、置換基を導入して閉環する形式と、エチニル基と活性化基とに挟まれた水素を引き抜くことにより、閉環に利用する官能基を導入し、閉環する形式の二通りである。 前者の例として、ヨードアニリンカーバメートと末端アセチレンとのパラジウム触媒クロスカップリング反応によって得られるエチニルアニリン誘導体のオルトリチオ化反応を行い、続いて、種々の親電子試薬と反応させた後、閉環反応により7位置換インドール誘導体の合成を行った。この方法を更に発展させ、置換基の嵩高さとメタル化活性化基の性質とを利用することによって、ベンゼン環部分のすべての位置に酸素官能基を有するインドール誘導体の一般的な合成法を確立することができた。 また、同様に考え方をピリジン誘導体に適用し、ブロモピリジンのオルトリチオ化反応を経由して得られるオルトブロモピリジンカルボアルデヒドに同様に末端アセチレンをパラジウム触媒反応によって導入し、次いで、アンモニアで閉環し、ナフチリジン誘導体を、あるいはオキシムを経由して閉環し、ナフチリジンN-オキシドの一般的合成法を確立した。 後者の例として、3-ヨードインドール誘導体に対する末端アセチレンのパラジウム触媒クロスカップリング反応により容易に得られる3-エチニルインドール誘導体の2位リチオ化反応を検討した。親電子試薬として、ギ酸エチルを用いて2位にホルミル基を導入した後、アルコール中アンモニアで閉環し、カルボリン誘導体の合成を行った。また、類似の反応を3-エチニルチオフェン誘導体で行い、比較的合成例の少ないチェノピロールの合成も検討した。
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