本年度は、イミダゾール部位のpKa値が1.6〜6.0の一連の1-methylbenzimidazole(MBI)誘導体を用い、m-chloroperoxybenzoic acid(mCPBA)による酸化反応を検討した。反応は2〜3等量のmCPBAを用い、クロロフォルム中、MBIと室温で反応させた。生成物はわずか5〜10%しか得られなかったが、その構造はpKa値に対応して、二つのタイプに分かれた。pKaが5.6〜6.0のMBIでは2位にm-chlorobenzoyloxy基が導入されると同時に、ベンゼン環にも水酸基が導入された化合物が、またpKaが3のMBIでは2-oxo体が得られた。このことはdeoxyguanosineのpKaが2ぐらいであり、酸化剤により8-oxo体を生成することと対応していて興味深い。pKaが1.6のMBIでは反応は全く進行しなかった。これらの結果から、イミダゾール部位の反応性は、イミダゾール部位の電子密度に著しく依存していることが明らかとなった。次にMBIによる酸化反応の機構について検討を行った。mCPBAはN-oxidationを行う試薬であることが知られているので、反応中間体としてN-oxideが生成していることが考えられた。そこで別途合成によりMBIの3-oxide誘導体を合成し、mCPBAとの反応を検討した。反応は非常に速く進行し、MBIに反応させた時と同一の生成物を与えたが、収率は悪かった。MBI-3-oxideにmCPBAの分解物であるm-chlorobenzoic acidを加えて反応を行ったが全く生成物は得られず、このことから、生成物はMBI-3-oxideにmCPBAが反応することにより生成していることが明らかとなった。反応機構についての詳細は現在検討中である。
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