研究概要 |
遷移金属触媒を用いた炭素-炭素結合形成反応は、分子の高立体選択的構築のための優れた手段と考えられ、最近特に注目されてきている。これらの反応を分子内反応、或いは環化付加反応に適応すれば環状化合物の不斉合成を行うことができ、これまでに我々の研究室でも数多く試みてきたが、さらに優れた不斉構築法を開発するために、容易に入手可能なenyne系化合物の遷移金属触媒による不斉閉環反応を検討し、その立体化学を明らかにし、不斉誘起機構を解明することを計画した。 1.オレフィン部の末端位にester基およびp-toluenesulfonyl基を有する1,6-enynesを反応基質として、種々のキラルホスフィン配位子の存在下パラジウム触媒反応を行うと不斉閉環をおこし、cyclopentane体が不斉合成されることがわかった。キラルホスフィン配位子の中でも、ferrocene系ホスフィン配位子が高エナンチオ選択性を示すことがわかった。 2.オレフィン部の末端位に(S)-α-アミノ酸として(S)-proline誘導体を導入した1,6-enyneを反応基質として用い、そのパラジウム触媒による不斉環化異性化反応に及ぼす影響を調べたが、大きな選択性はみられなかった。 3.オレフィン部の適当な位置にキラルスルフィニル基を導入した1,6-enynes類のパラジウム触媒による不斉環化異性化反応を行うと、高選択的に環化し光学活性のcyclopentane類を生成することがわかった。キラルスルフィニル基の与える影響を液体クロマトグラフィーで定量し、立体選択性を明らかにした。キラルスルフィニル基の反応に及ぼす立体的影響を考察し、その不斉誘起機構を推定した。 4.今後、上記の各反応による生成物の立体化学を明らかにし、その不斉誘起機構を解明したい。 5.キラルスルフィニル基を有する不斉配位子を用いてパラジウム触媒による1,6-enynesの不斉環化異性化を行いキラルスルフィニル配位子の果たす役割を明らかにしたい。
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