研究概要 |
製剤上の問題点である難溶性薬物の可溶化や不安定薬物の安定化のための新規包接素材としてシクロフラクタンに着目し、その効率的化学合成法の確立と包接機能を解明する。 平成9年度はシクロフラクタンの化学合成のための重要中間体となるfructosyl-β(2→1)-fructoseの合成に必要なフルクトシル供与体および受容体の調製、ならびに立体選択的フルクトシル化反応の開発を行った。 D-フルクトースをp-トルエンスルホン酸の存在下、2,2-ジメトキシプロパンと反応させ、1,2:4,5-di-O-iso-propylidene-α-およびβ-fructopyranoseを定量的に得た(α:β=1:5)。つぎにβ-アノマーの4,5位のイソプロピリデン基を位置選択的に脱保護化(0.1%塩酸)し、1,2-O-isopropylidene-β-D-fructopyranose(収率82%)としたのち、遊離の水酸基をベンジル化(BnBr/NaH/DMF)し、3,4,5-tri-O-benzyl-1,2-O-isopropylidene-β-D-fructo-pyranoseを収率98%で得た。つぎに1,2位のイソプロピリデン基を脱保護化(AcOH/H_2O/70℃)し、3,4,5-tri-O-benzyl-β-D-fructopyranoseを得た。1位の1級水酸基を位置選択的にメトキシベンジル化したのち、2位の2級水酸基をトリメチルシリルエチル基で保護することにより、永久保護基と一時保護基を位置選択的に導入したフルクトースの完全保護体を合成することができた(D-フルクトースから6工程、全収率25%)。つぎにこの完全保護体の1位メトキシベンジル基のみを酸化的に脱保護化し、フルクトシル受容体とした。一方、2位の脱トリメチルシリルエチル化により2位水酸基遊離のフルクトースを得、つづいてフッ素化してフルクトシルフルオリド(フルクトシル供与体)とした。さらに、これらフルクトシル供与体と受容体との立体選択的カップリング反応を試みた。
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