新しい生物活性物質の有機化学的探索、合成と反応、及び活性評価

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09672161
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 研究機関: 帝京大学
• 研究代表者: 高山 浩明 帝京大学, 薬学部, 教授 (00012609)
• 研究分担者: 藤島 利江 帝京大学, 薬学部, 助手 (90286980) ; 紺野 勝弘 帝京大学, 薬学部, 講師 (40215471) ; 鈴木 高義 帝京大学, 薬学部, 講師 (10119589)
• キーワード: 独居性狩蜂 / 神経毒 / ペプチド / ビタミンD誘導体合成 / ビタミンD活性 / 電解酸化 / 縮環スルホレン / デイールス・アルダー反応

研究概要

先に提出した科学研究費補助金交付申請書の平成9年度研究実施計画の各項目に対応して述べる。
本課題研究は3部から成り立っている。
(1)本年度は狩蜂の採集は行はず、昨年度までに採集した各種日本産独居性狩蜂についてその毒嚢成分の構造決定に全力挙げた。先ずオオフタオビドロバチの毒嚢を摘出し、イセエビ歩脚神経筋の神経伝達を阻害する抽出分画を、逆相HPLCにて丁寧に分離精製し2種のオリゴペプチドを得た。構造はEdman分解及びマススペクトロメトリー(FAB-MS/MSとMALDI-TOF-CID)より推定し、別途合成により決定した。マストパラン様活性を示した(第1回国際ペプチド討論会、Dec1997,Kyoto)。他方、ベッコウバチからも同様の手法によりオリゴペプチドの単離に成功しており(第39回天然有機化合物討論会、1997.8、札幌)、その神経作用が注目される[論文1参照]。
(2)活性型ビタミンD_3がレセプター(VDR)と結合し作用発現するとき、A環部の立体配座がどのようになっているかを解明のが究極目的である。A環のコンフォメーションが微妙に異なる2-methyl-1,25-(OH)_2D_3の8種のジアステレオマ-総てを合成した。合成法はTrost法を基盤としA環前駆体(enyne)合成に工夫をこらした。ここに得られた全8種のVDR結合能、DBP親和性、Ca代謝調節作用、HL-60分化誘導作用を測定し(共同研究者)、2α-methyl-1α,25-(OH)_2D_3が活性型ビタミンD_3より高い活性を有することを見い出した[論文2参照]。更に、これら化合物の20-エピ体すべてを合成し、2α-methyl-20-epi-1α,25-(OH)_2D_3のVDR結合能は10倍、HL-60分化誘導作用能は600倍と高い活性を有することを発見した(第17回メデイシナルケミストリーシンポジウム、1997.11,筑波)。基礎研究としては、25-位水酸化のbiomimetic酸化として電解酸化を開発した[論文3参照]。
(3)ピロール部に置換基を導入したピロール縮環スルホレンを合成し、分子間Diels-Alder反応を検討しアルカロイド合成の可能性を探った[論文4参照]。また、アシル置換フラン縮環スルホレンから分子内、分子間D-A反応を用いて多官能基化多環化合物の合成に成功した[論文5参照]。

研究成果

• [文献書誌] K.Konno,H.Takayama,N.Kawai et al.: "α-Pompilidotoxin(α-PMTX)a novel neurotoxin from the venom of a solitary wasp,facilitates transmission in the crustacean neuromuscular synapse." Neuroscience Letters. 238. 99-102 (1997)
• [文献書誌] K.Konno,T.Fujishima,H.Takayama,et al.: "A novel and practical route to A-ring enyne synthon for 1 α,25-dihydroxyvitamin D_3 analogs:Synthesis of A-ring diastereomers of 1 α,25-dihydroxyvitamin D_3 and --------" Bioorg.& Med.Chem.Letters. 8(2). 151-156 (1998)
• [文献書誌] S.Maki,K.Konno,H.Takayama: "Selective oxidation of terminal isopropyl groups to tertiary alcohols by electrochemical methodology." Tetrahedron Letters. 38(40). 7067-7070 (1997)
• [文献書誌] T.Suzuki,H.Takatama,et al.: "Synthesis of 4-substituted 3,5-dihydro-1H-thieno[3,4-c]pyrrole 2,2-dioxides ans their Diels-Alder reactions." Heterocycles. 46. 199-202 (1997)
• [文献書誌] K.Konno,H.Takayama,et al.: "A novel approach to functionalized polycyclic systems;Synthesis of tetracyclic compounds by sequential rearrangement-cycloaddition reactions of 7-oxa-2,3- ---------" Heterocycles. 47(1). 167-170 (1998)