研究概要 |
(1) 相模湖周辺、茨城県、京都市で捕獲した雌狩蜂を種別し、毒嚢を抽出し、逆相HPLCにてイセエビ神経筋標本による活性分画を集め、精製をくり返して単離し、構造は主として現在の質量分析の最先端であるMALDI-TOF-CID法を用いて推定し、Fmoc-L-アミノ酸を用いた固相法で別途合成して決定した。昨年度はオオフタオビドロバチ(eumenine科)からeumnenine mastparan-AF[Ile-Asn-Leu-Leu-Lys-Ile-Ala-Lys-Gly-Ile-Ile-Lys-Ser-Leu-NH_2]を単離し、スズメ蜂毒成分マストパラン様活性に酷似していることを証明し、肥満細胞を用いたヒスタミン遊離作用など更に詳細な生理作用を検討している。今年度は、オオモンクロベッコウ、及び更に捕獲数の少ないモンベッコウ(Pompilidae科)から毒嚢を抽出し、同様な精製をくり返して単離し、質量分析も酵素を用いたMALDI-TOF-Ladder Sequence法を加えて超超微量の毒成分がArg-Ile-Lys-Ile-Gly-Leu-Phe-Asp-Lys-Leu-Ser-Lys(β-はArg)-Leu-NH_2なる構造を有することを突き止め、合成で決定し、α-及びβ-pompilidotoxinと名付けた。このペプチドの神経作用は今まで類例を見ないもので神経生理学者の注目を集めている。作用機構や類縁体の合成を展開する予定である。 (2) 昨年度は2-Me-1,25-(OH)_<2->D_3のA環の立体配置の異なる全8種のジアステレオマーを合成し、VDR結合能が、A環置換基の立体配置の違いで大きな差を生じること(10^5幅)、水酸基は天然型配置が活性が強く、特に2α-Me体のVDR結合能は1α,25-(OH)_<2->D_3(基準とする)の4倍、HL-60分化誘導能は2倍、Ca代謝調節能は4倍と増強した。本年度は更にそれらの20-epi体を合成し、その生物活性を調べたところ、2α-Me-1α,25-(OH)_<2->D_3はそれぞれ12倍、590倍、6,5倍という高活性を示した。一方、4-Me-1,25-(OH)_<2->D_3のA環の立体配置の異なる全8種のジアステレオマーを合成し、VDR結合能を調べたところ、水酸基が天然型でも10^<-2>で、殆ど10^<-3>以下であり親和性がなかった。配座解析は[1α,2α-Me,3β]体のX線結晶解析では1位OH基がequatorialのβ-formで存在するが、溶液中ではaxialであるα-form(/β-formは約2/1)が優先した。[1α,2β-Me,3β]体ではMe基がequatorialに近いハーフボートのβ-formが優先することが分った。また、新mosher法を拡張した1,3-diolの絶対配置の決定法を開発した。Me以外の2-置換誘導体、A環・側鎖同時修飾ハイブリッド化合物の合成と活性評価、配座固定した誘導体の合成を展開中である。また、D欠乏状態でのCa代謝調節能、各種の転写活性、アポトーシス制御能が調べられている。(3)本年度は(1),(2)の研究展開が目覚ましく(3)の研究は中断した。
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