研究概要 |
1. パラジウム触媒を用いたピロールおよびインドール骨格の簡易合成法の開発 容易に入手可能なアミノ酸の還元反応により得られるアミノアルコールと、β-ケトエステルとの縮合により得られたβ-ヒドロキシ-エナミン類をパラジウム触媒存在下臭化アリールと共に加熱したところ、多置換ピロールを高収率で得ることに成功した。本反応は市販の原料から短行程、高収率で多置換ピロールを一挙に合成できるという利点を有している。更に、本反応を種々の基質に適用し、4-オキソ-4,5,6,7-テトラヒドロインドール誘導体、3-置換インドール、および-2,3-ジ置換インドール類をそれぞれ高収率で得た。4-オキソ-4,5,6,7-テトラヒドロインドール誘導体はバッカクアルカロイドの合成原料となる。一方、今まで、2.3-ジ置換インドール類の一般的な合成法があまり知られていなかったので、今後、天然物合成においてその有用性を検討する必要がある。 2. 一電子還元剤を用いる炭素ー炭素結合生成反応を利用した生理活性天然物の合成研究 二塩化クロム存在下(S)-Garnerアルデヒドと臭化クロチルとのカップリング反応は、円滑に進行し、対応するホモアリルアルコールを高収率で与えた。この時得られたジアステレオマーは2種であり、生成比は約4:1であった。更に、主生成物を数行程かけて、(2R,3R,4R)-2-hydroxy-3-methylprolineを合成した。これにより、昨年の本研究で合成された(2R,3S)-2-hydroxymethyl-3-methylpyrrolidine、(+)-bulgecinineに引き続いて、本合成コンセプトを応用した3つ目の天然ピロリジン類の合成を達成したことになる。更に、本反応を抗血小板凝集抑制作用を有する海産Sulfobacin A合成に適用し、現在、全合成に向けて検討中である。
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