研究概要 |
北海道近海のウニから抗腫瘍活性を示す糖脂質3'-sulfonoquinovosyl l'-monoacylglyserideの化合物群が分離された。天然からは極く微量にしか得られず、なおかつ脂肪酸部分が二重結合や重合度に関するの異性体の混合物で得られるため、正確な炭素数、二重結合の数、結合位置を特定することは極めて困難であった。このような理由から、天然型の化合物の化学合成を行い、その知見を利用して種々の類縁体を合成し、抗腫瘍活性の高い物質を得ることを目的とした。平成9年度では、α-allylglucosideを出発原料にして、二級アルコールの立体を無視した合成経路を確立した。飽和および不飽和脂肪酸を導入した化合物22種の合成に成功した。平成10年度はβ-allylglucosideを出発原料にして、同様の化合物22種を合成した。真核生物のDNA polymeraseを使用した酵素阻害試験では、αおよびβに対して低濃度で阻害する物質があった。細胞試験では糖鎖の1位の立体と脂肪酸の組成により活性が選択であることが明らかになったが、ヌードマウスを使った試験では細胞試験とは異なる脂肪酸に活性がみられた。糖脂質の脂肪酸部位が活性発現の重要な因子であることを見いだしたので、生化学試験を検討した結果、DNA polymeraseβの8kDa domainと脂肪酸が結合することが明らかになった。この結合様式を750MHz NMRで解析を試みるためN15を導入したDNA polymerase β 8kDaを大量に発現させた。コンピュータ解析により、阻害において重要なタンパクドメインのアミノ酸残基がL11,K35,H51,T79であることを決定することに成功した。
|