研究概要 |
クワ(Morus alba L.)の実生より誘導したカルスはβ-sitosterolなどのステロール系化合物およびカルコン誘導体などのイソプレニルフェノール系化合物のための各々独立した2種類のイソプレン生合成経路が共存している。今年度新たにヤマグワ種のMorus bombycisの実生よりカルスを誘導しマグワ種M.albaカルスとの成分を含めた比較検討を行った。M.bombycisの実生からカルスの誘導はM.albaカルス誘導条件と同様2,4D添加のLS培地より行った。カルス化後,細胞塊をMS寒天培地にて数次継代培養した。そこで,M.bombycisカルスの成分検索を行ったところイソプレニルフェノール類としてchalcomoracinおよびkuwanon Jを効率良く産生していることが明らかとなった。このカルスの二次代謝産物の産生傾向はマグワ種M.albaカルスとほぼ同様であることが確認できた。また,マグワ種のイソプレニルフェノール類の生合成につき再検討した。主たるイソプレニルフェノール成分chalcomoracin,mulberrofuran E,kuwanon J,Q,R,Vについて各化合物への13-C標識酢酸の取り込み率を比較したところ酸化段階の少ない化合物において取り込み率が増大していた。この結果から,酸化段階の最も少ない化合物が生合成された後に順次酸化されて一連のイソプレニルフェノール類が生成することが示唆され,2-アリルベンゾフラン系ではmulberrofuran Eの水酸化によりchalcomoracinが,カルコン系統ではkuwanon Vが最初の生合成された後,kuwanon Q,R次いでkuwanon Jが各々水酸化反応により生合成されることが推定された。
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