研究概要 |
本研究はタキサン骨格の新規構築法を開発し、タキソ-ルの全合成を行うとともに各種タキソ-ル関連化合物を合成することを目的としている。合成計画の骨子は、安価な糖よりC環部を合成し、これを単純な構造のA環部と結合後、モデル実験で開発済みのニトリルオキシドによる分子内環化反応を用いてタキサン骨格を形成し、これをタキソ-ルに誘導するものである。この計画に従い検討した結果、つぎの成果を得た。タキソ-ルC環部の合成法が開発できた:3-Methoxymethyloxy-6-methyl-2-cyclohexene-1-oneとD-mannitolより誘導したα,β-不飽和エステルとの連続Michae1反応で合成できるmethyl(1S,2R,3R,4R,4´S)-3-(2´,2´-dimethyl-1´,3´-dioxolan-4´-yl)-1-methoxymethyloxy-4-methyl-5-oxobicyclo[2.2.2]octan-2-ylcarboxylateのエステルをベンジルオキシメチル基に変換し、橋頭位メトキシメチルオキシ基をメシルオキシ基に変換した化合物に、メタノール-DMSO中過剰量の水素化ホウ素ナトリウムとカリウムt-ブトキシドを作用させるとケトンの還元、フラグメンテーション反応、生じたアルデヒドの還元が一挙に起こり、五置換シクロヘキサン誘導体が得られた。この化合物は数工程を経て、C環部となる(1S,2R,3R,6R)-3-benzyloxy-2-benzyloxymethyl-6-methyl-6-trimethylsilylethyloxymethyl-1-cyclohexanecarbaldehydeに誘導できた。2.適切な官能基を備えたタキサン骨格の合成に成功した:2,2-Dimethyl-1,3-cyclohexadioneより導いた4,6,6-trimethy-1,4-cyclohexadienyllithiuumとC環部を結合後、分子内にニトロ基とオレフィンを有する化合物に誘導し、これにトリエチルアミン存在下p-chlorophenyl isocyanateを反応させると環化反応が進行しタキサン骨格が構築できた。なお、設備備品として購入した投げ込み型冷却器は、連続Michael反応など低温で行う反応に使用した。
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