(1) 15族重元素から成る1-/<ンゾヘテロール類と光学活性なPd試薬との反応で、分離可能な2種のジアステレオマーが定量的に生じ、この反応を利用して種々のへテロール類を光学分割できることなどを見出していた.この錯体形成反応では、Pd試薬の種類やPd賦薬に対するヘテロール類の当量比によって両ジアステレオマーの生成比に差が認められる.鋼ヒ合物のX線結晶解析結果の考察などから、この差は両者の立体的な安定性の違いに起因しているものと考えられた.また、ここで得られた光学活性体のアルキルリチウム試薬による、求核置換反応は立体保持で進行することが判明した. (2) 15族重元素上のエチニル基が緩和な脱離基として機能することを見出し、その特性を利用したuおよび両試薬による種々のキラルな15族重元素化合物の一般合成法を確立することができた.また、この反応を光学活性体に適用すると、上記(1)の結果とは異なり、反応は立体反転で進行することが判明した.この立体化学の違いは反応中間体であるアート錯体の立体配座の違いに起因しているものと考えられた. (3) 元素は周期表の下に位置するものほどhypcrvalcnt化合物を形成しやすくなる.この性質に着目し、上記の置換反応を様々な有機アンチモン化合物に適用することによりアート錯体を経由した効率的なアニオン種の発生法を見出した.また、同様なhyper valen化合物を経由する酸素共存下の光反応によるオレフィン類の酸化的アリール化を見出すこともできた。 (4) エチニル基を持つ有機アンチモン化合物に、P磁媒のもとで酸ハロゲン化物を作用させるとクロスカップリング反応が進行するのに対して、ハロゲン化アリルを作用させるとホモカップリング反応が進行し、本化合物は用いるハロゲン化物の種類によって反応生成物が大きく異なることを新たに見出した. 以上、有機アンチモン化合物は新しい不斉合成素子としてのみならず、様々な有機合成試薬としての機能を持つことが判明し、有機アンチモン化合物に関する今後の新たな展開が期待される.
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