研究概要 |
1.有機アンチモン化合物の光学分割法の開発 先に第15族重元素(P,As,Sb)から成る(±)-ヘテロール類の光学活性Pd試薬を利用した光学分割法を見出していた.しかし、(±)-Sb化合物の場合、本分割法ではカラムクロマトによる分離操作を必要とした。今回、Pd試薬に過剰のSb化合物を作用させると一方のジアステレオマーのみが立体選択的に得られることを見出した.また、得られたSb-Pd錯体のX線結晶解析よりその絶対構造とともにこの立体選択的分割は両ジアステレオマー間の立体的な安定性の違いに起因していることを明らかにした。 2.二配座光学活性有機アンチモン化合物の合成とその不斉合成反応への応用 BINAPに代わる不斉補助剤として、(±)-BINASb類の合成とその光学分割法を検討し、簡便な(±)-BINASb類の合成法とその効率的な光学分割法を確立することができた。あわせて、ここで得られた光学活性BINASb類はケトン類のある種の不斉還元補助剤としてBINAP以上の能力を持つことも明らかになった。現在、これらの詳細とともにSb上にキラリティーを持つ一および二配座化合物の合成、光学分割およびそれらの不斉合成反応への応用に取り組んでいる。 3.ジナフチルスチボール類の合成とその構造および性質 1,1'-ビナフチル誘導体からの簡便な表題化合物の合成法を見出すとともに、そのX-線結晶構造解析から、本化合物の二つのナフタレン環のなす角(36°)は対応するPおよびAs化合物よりも大きくなること、NMRスペクトルによる解析から、本化合物のラセミ化の活性化自由エネルギー(約20Kcal/mol)は、P、As化合物(約16Kcal/mol)よりも増大することなどが明らかになった。あわせて、その光学活性体の合成を行い、得られた光学活性体は温室下で徐々にラセミ化することなどを確認した。
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