研究概要 |
和歌山県のブドウ栽培農家から提供を受けた巨峰Vitis vinifera'Kyohou'の幹のコルクをメタノールおよびアセトンで抽出し,それぞれの抽出物を得た。抽出物を溶媒分画し,比較的極性の高い分画である酢酸エチル可溶部を各種クロマトグラフィーを用いて分離し,数種類の新オリゴスチルベン類を単離・構造決定することに成功した。そのうち,スチルベンテトラマ-のhopeaphenolは今までに数種の植物からの単離と構造が報告されているが,いずれも(+)-体であり,(-)-体の単離は巨峰からの今回が初めての例である。その生合成および生理的意義を考える時,(+)-体と(-)-体がいくつかの異なる高等植物からそれぞれが単離されたことは大変興味あることである。次に,(-)-iso-hopeaphenolもスチルベンテトラマ-で,しかも新化合物である。その構造はhopeaphenolの立体異性体であることが明らかとなった。さらに,今まで分離な困難混合物として報告されていたスチルベンテトラマ-Vitisin Aおよびcis-Vitisin Aを分離し,それぞれを単離することに成功した。両者の構造決定を分光学的に行い,さらに光化学的変換にも成功し,それらの構造を確認した。また,巨峰にはVitisin Aは含まれるが,cis-Vitisin Aは含まれないことを明らかにした。その他の単離された化合物については,現在,分光学的および化学的方法で構造決定を行っている。 以上の結果は,すでに学会発表および学術論文で公表されているか,あるいは,その準備中のものである。
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