研究概要 |
昨年度に巨峰のコルク層から単離・構造決定したスチルベンテトラマー,(+)-Vitisin Aおよび(+)-cis-Vitisin Aの絶対配置の決定を行った。すでに,ヤマブドウ(Vitis coignetiae)の成分として報告されているスチルベンダイマー,(+)-Ampelopsin Aの二級アルコールを酸化し,ケトン体とした。このケトン体のCDスペクトルを解析し,オクタント則を適用し,(+)-Ampelopsin Aの絶対配置を決定した。次いで,(+)-Vitisin Aの二重結合をオゾンで切断し,得られたアルデヒド体のCDスペクトルを先のケトン体のそれと比較することにより,(+)-Vitisin Aの絶対配置を決定した。同様にして,(+)-cis-Vitisin Aおよび(+)-Ampelopsin Bの絶対配置も決定した。 次に,新しい成分を検索した結果,1種のスチルベンダイマー(Viniferifuran)および2種のスチルベンテトラマー((+)-Vitisifuran A,(-)-Vitisifuran B)を単離した。それらの各種スペクトルの解析および化学反応による生成物の構造を確認することにより,化学構造を決定した。これら3つの新化合物は共通して分子内にフラン環を有するベンゾフラン誘導体である。また,(+)-ε-Viniferin,(+)-Vitisin Aおよび(+)-Vitisin BからDDQ酸化を鍵ステップに用いることにより,それぞれを合成し,構造の確認と同時にそれらの絶対配置を決定した。
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