研究概要 |
2-メチルシクロヘキサノンの(S)-(-)-フェニルエチルアミンとのイミンを合成し,アクリル酸メチルと無溶媒で反応させると1,4付加物が生成した.これを加水分解して得たケトエステルのeeは96%であった.そこで絶対配置を調べるために,エステル部分を還元しアルコールとしたものについて(lS)-(-)-カンファニッククロリドを用いて誘導体とし,X線結晶解析を行うことにより絶対配置を決定した.CDスペクトルは(+)のCotton効果を示し,通常の立体配座から想像されるものとは異なっていた.次に側鎖の長さの異なるものを種々合成しCDスペクトルを測定した.また側鎖部分にエステを持たないものも合成し,これらすべての誘導体においてCDスペクトルが(-)のCotton効果を示すことが明らかになった.そこで,2-エチルシクロヘキサノンについて同様に反応した.得られたケトエステルは97%eeであり,CDスペクトルは(-)のCotton効果を示した.このものについてもX線結晶解析を行い絶対配置を決定した.また4-t-ブチル-2-メチルシクロヘキサノンと4-t-ブチル-2-エチルシクロヘキサノンについても同様に行い,立体配座がCDの符号と密接な関係にあることを証明した.その他に,アリル基,プロピル基,イソプロピル基,オクチル基を有するものについても同様に反応しケトエステルについてCDスペクトルを測定した. その結果,2-メチル体はすべて(+)の,またその他の化合物は(-)のCotton効果を示した.これらはシクロヘキサノン部分の立体配座によると思われるが,詳細は力場計算を用いる解析により来年度の計画で行う予定である.このようにカルボニル基のα-位に2つ置換基を有するシクロヘキサノン誘導体においてCDスペクトルを詳しく調べたのは今回が初めてである.
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