可溶型マウスFcγレセプターII(sFcγRII)とマウスIgG2bのFcフラグメントの相互作用系に関して以下の知見を得た。 1.ゲルろ過および超遠心分析の結果、FcとsFcγRIIは1分子対1分子の複合体を形成していることを明らかにした。 2.表面プラズモン共鳴法を利用した解析を行った結果、FcとsFcγRIIとの相互作用にはFcのN-結合型糖鎖の存在が不可欠であることが明らかとなった。また、両者の親和性には静電相互作用が寄与していることを明らかにした。 3.アミノ酸タイプ別に主鎖カルボニル炭素を^<13>C標識したFcフラグメントを用いて^<13>CNMR解析を行った結果、Fc上のsFcγRII結合部位はヒンジ領域の下流とその空間的近傍から構成されていることが明らかとなった。また、N-結合型糖鎖を除去することによってsFcγRII結合部位の高次構造に変化が引き起こされることが示された。更に、ホモダイマー構造を有するFc上の2つの等価なsFcγRII結合部位のうちの一方にsFcγRIIが結合すると、他方にも高次構造変化が誘起されることが判明した。こうした高次構造変化の結果、1分子のFcに2分子のsFcγRIIが同時に結合することは不可能となり、単分子のIgGが抗原非存在下で自発的にsFcγRIIを架橋して細胞応答を引き起こしてしまうことが抑制されていると結論した。 4.sFcγRII分子上の糖鎖結合部位を同定するとともに主要なN-結合型糖鎖構造を決定した。更に、グリコシダーゼ処理による糖鎖のトリミング条件を検討した。
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