研究概要 |
多くの薬物は経口投与される。RowlandとTozerは著書“Chnical Pharmacokinetics,Concepts and Apphcation"において薬物が消化管から体循環へ吸収されるに際して、腸管腔、腸管壁、および肝臓のそれぞれの局所動態に分けて評価する概念を述べている。本研究室ではこの概念を数値化するために覚醒ラットの体循環血と門脈血を同時採血して、それらにおける薬物濃度差から門脈血への吸収量と吸収速度とおよび肝臓での通過率を求める方法(PS法)を開発して改良を加えてきた。今回のPS法の改良点は薬物を動脈内投与後、一定時間後をおいて経口投与する(DD法)ことにより1匹のラットから門脈吸収、肝臓通過および体循環の局所動態を評価する方法(PS-DD法)を初めて開発した。尿中に100%未変化体として回収される抗生物質cephalexinをモデル薬物としてPS-DD法の妥当性を調べた。その結果cephalexinの門脈吸収率および肝通過率がともに100%となりPS-DD法の妥当性が証明された。次にPS-DD法の有効性を証明するために抗癌剤5-FUをモデル薬物として採用した。その結果5-FUは門脈に70%、肝臓通過率が35%、結果として吸収率が25%と初回通過効果を分離評価できPS-DD法の有効性が証明された。さらに5-FUのプロドラッグである5'-DFURを消化管壁での代謝のモデル薬物としてPS法を適用した。その結果5'-DFURは未変化体および5-FUとして門脈にそれぞれ65%、7%吸収されることがわかりPS-DD法が消化管代謝の評価に有効であることが示された。
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